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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

これはさいわいと土蔵へ忍びこみ、鎧櫃にひそんでいると……ナア源三郎、これがおめえのまだ運のつきねえところというのだろう。夜になると、そのおれのはいった鎧櫃が、道場の正面へかつぎ出されて、その前で遺跡相続のかためが始まったのだ。道場のあるじに直ろうとしているのは言うまでもなく峰丹波」

萩乃があとを受けついで、

「ハイ、丹波は、二世十方斎の名と、継母お蓮の方とを天下はれて手に入れようとの魂胆でございます。そのために、わたくしの……」

言いさした萩乃の頬は、行燈の灯を受けて、秋の入り陽にはえる紅葉のように赤い。

むすめ心にためらったが、やがて思いきって、

「わたくしの――夫ときまった源三郎様を亡き者にしようとし、また、このわたくしをも押しこめ同様に……」

すると、左膳、思い出したように笑って、手近な大刀を引きよせてホトホトと鞘をたたきながら、

「コレ、濡れ燕、おめえもよく働いてくれたが、残念だったなア、丹波をうちもらしたのは」

じっと何か考えこんでいたが、不意にほがらかに、

「サ、これでいい。萩乃と源三郎を会わしてしまえば、丹下左膳の役目はすんだのだ。サア、おれはこれから……」