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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

身を裂くような思いで、やっと愛着を振りほどき、りっぱに殺し得たとばかり思っていた、その当の相手の源三郎が!

どうです!

おどろいたことには、何事もなかったようなケロリ閑たるようすで、夕方、奥庭の植木に水を打っていた――。

あれから何事もなく、ずっとこの道場にいて、もうもう毎日、平凡な日を持てあましている、といったように。

渋江村の寮……火事――おとし穴……水責め……あれらはすべて、悪夢の連鎖? ではなかったか?

と、瞬間にお蓮様は、わが眼を疑ったのもむりではなかった。

「アラッ! 源様では――!」

思わず低声につぶやいて、横手に立っていた丹波の袖を、そっと引いたのでした。

峰丹波とお蓮さま、通りがかった廊下に、凝然と足をすくませて、進みもならず、しりぞきもならず……。

幽霊を見た気持というのは、あのときのことだろう。

ハッハッとあえぐ丹波の息づかいを、お蓮様は耳に近く聞いたのだった。

死んだはずの源三郎が、悠然と柄杓をふるって、夕闇せまる庭に、静かに水をまいている。

怪談にはもってこいの夏だ。

おまけに。

物の怪の立つというたそがれどき。

縁に立つ二人が、水を浴びたようにふるえおののいていると知ってか、知らずにか、源三郎は口のなかで、何か唄いながら、いつまでも草の葉、木の根に水をやっていたが、やがて、振り返り