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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
もせずにひとこと、
「丹波! 礼をするぞ。きっとそのうちに、挨拶するからなナ」
せまる宵闇にからんで、しっとりした小声。
源様ッ!……お蓮さまはせいいっぱいに叫んだような気がしたが、声をなさなかった。
突如! バタバタという跫音に気がついて、振り返ったお蓮様は、顔色を変えた丹波が、廊下を、もと来たほうへと逃げかえるのを見た。
意外千万にも源三郎が生きている! 生きてこの道場へ帰ってきている! もういけない! すべてはだめだ! と丹波は観念したのだろう。大きなからだをこまねずみのようにキリキリ舞いさせて、不知火の弟子どものいる広間のほうへと、スッとんでいったが……。
茫然とそれを見送ったお蓮様が、ふと気がつくと、手桶をさげた源三郎、露草にぬれる裾を引きあげて、むこうへ帰ってゆく。
すると、です。
丹波の出ようひとつ、源三郎の合図ひとつで、一気に斬りかかろうと、隠れていたのであろう。そこらの植えこみや樹立ちの蔭から、伊賀侍の伏兵が、三人五人と立ちあがって、お蓮様には眼もくれず、源三郎のあとに従って行きます。
「きっとあの萩乃も、いま源様といっしょにいるに相違ない。