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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
ふたたび、とんがり長屋――。
「おらア湯にへえってたんだが、ガラッ熊の野郎が駈けて来やアがって、なんだか知らねえがりっぱなお侍さんが、素敵もねえ駕籠を持って、おいらの長屋の作爺さんを迎えに来たというじゃアござんせんか。イヤ、おどろいたね。どんなわけがあるにしろ、べらぼうメ、作爺さんをもってゆかれてたまるもんか――ッてんでネ、ヘエ、ぬれたからだのまんま、こうしてふんどしひとつでとんできやしたが、ああ、苦しい!」
一気にまくしたてる石金を先頭に、なが年おなじみのトンガリ長屋の住人たちが、ワイワイ言って作爺さんの土間へおしこんでくると!
「コラコラッ、下郎ども! 寄るでない。作阿弥先生に御無礼があっては、あいすまぬ。道をあけろあけろ!」
という田丸主水正のどなり声。
夢見るような顔つきの作爺さんが、その主水正のあとにつづいて、土間へ下り立とうとしている。
「お爺ちゃん、やっぱりゆくの?」
チョビ安とお美夜ちゃんの、ふりしぼるような声が追う。
作阿弥は、長屋の人たちの顔を見わたして、
「いかいお世話になりましたな」
と言った。
九
静かな中に、炎々たる熱を宿した作阿弥の姿は、つめたい焔のように、見る人の胸を焼きつらぬかずにはおかない。