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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

武骨者ぞろいの道場には、ちょいと珍しい渋い咽喉を聞かせて、そのまま、ガタン、ピシャッ! 戸をしめようとすると、その雨戸のすき間に、つぶされたようにはさまっているものがある。

「なんだ、これは……」

その、半分ほど座敷のほうへしめこまれているものを、足もとをすかしてよく見ると……。

姫ゆりの花。

風流です――と言ってはおられない。何者がなんのために、この部屋の外へ、姫ゆりの花などを持って来たのか?

しかも、庭から忍んで。

不知火の門弟一同、さっと丹波の顔へ眼を集めた、指揮を求めるように。

「左近、もう一度雨戸をあけて、その花を取ってみるがよい」

そこで左近が、また雨戸の桟をはずし、一、二寸戸を引いて、すき間からその姫ゆりを抜き取ってみますと……果たして、茎に、一枚の紙片がむすびつけてある。

誰かが庭づたいに来て、これを雨戸のすきへ押しこめたのち、ドンと戸をたたいて逃げて行ったのだ。

どこから?――などと、きくだけ野暮。

この庭のむこうに対峙している、伊賀侍のしわざにきまっている。

伊賀の暴れん坊……柳生源三郎の使者。

峰丹波、手のふるえを部下に見せまいと努めながら、文をひらきました。