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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
ちょうど萩乃源三郎と入れ違いに、なにが何やらサッパリわからないお露、狐につままれたような気持で父の家へ送られて行きましたが、これで見ると、この娘は、無意識のうちに、源三郎をふたたび道場へかえす役目を果たしたのです。そして、今後いかに、このお露が物語に現われてくるか?
それは後日のことといたしまして。
今。
やっぱり丹波を斬るのか、ときいた萩乃の言葉に、源三郎は無精ッたらしく首をねじむけて、
「彼が斬られるとかぎらぬサ。余が斬られるかもしれぬ」
「マア怖い!」
萩乃は団扇で顔を隠して、
「そんなことになったら、あたくしどういたしましょう。でも、やっぱりあなた様のほうが、お勝ちになるにきまっていますわ」
源三郎はこの萩乃を、いったいどう思っている? 愛しているのか、いないのか、誰にもさっぱりわかりません。
そのときです……。
雨戸の外の庭に、ポンポンと二つほど、手が鳴りました。
二
すぐ外の庭で、まるでかしわ手のように、手を打ち鳴らすのを聞いた源三郎は、ニヤッと笑って、
「拝んでやがらア」
と、つぎの間の一人へ、
「丹波から返事が来たぞ」
声に応じて、腰をかがめて縁側へ出て行った若侍が、しめ残してある雨戸から、庭前をうかがうと、すぐ下の沓ぬぎの上に、緑の小枝が置いてあるのが、室内のもれ灯に浮かんで見える。