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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「正保二年、承応三年、寛文四年九月、延宝七年……と、ちょっと数えましても、実におびただしい御修覆の数々。ところで、そのいずれの場合にも、まずいちばん先に損じてお手入れの必要を生ずるのが、いつもきまってあの護摩堂の北側の壁――」

「こんどもそうだということです。で、日光役人はたえずその護摩堂の北側の壁に気をつけておって、そこが破損しかけてくると、いよいよ他の部分も大々的につくろいをほどこさねばならぬ時期が来たことを知り、ただちに江戸表へ具申して、そこで、あの、城中大広間の金魚籤となり、そのときの造営奉行をとりきめるという、こういう手順だそうで」

「実に面妖な話じゃ」

対馬守の眼が、キラリと光った。

三人をつなぐ、三角形の中点に置かれた燭台ひとつ、そのうつろいをうけて、三つの顔は、赤鬼青鬼の寄りあいのよう……。

「なにかあの護摩堂の北側の壁に、たたりでもあるのでは……」

「サ、そこで、こんどあの壁へ人柱を塗りこんでは――という、この相談も持ちあがりましたようなわけ――」

六

何を思ったか対馬守は、大声に笑い出して、

「こんどのこの造営に際して、その問題の護摩堂の北側の壁へ、生きた人間を人柱に塗りこめねばならぬ……と言い出したのは、いったい誰じゃ?」