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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

唖の娘……その名を、お梶という。

彼女は。

このたびの御造営に壁を受け持って、京都稲荷山からはるばる上ってきた伊助という左官頭の妹で、お蓮様づきとしてこの一つ家へ送られるまでは、兄や、手下の左官どもとともに、奉行所につづくお作事部屋にいたのですが。

唖だから、耳は聞こえないけれども、兄伊助とだけは、千変万化の手真似や表情で、かなり複雑な話ができるのも、これは肉親だから、ふしぎはない。

ここへ来る前、ある夜兄の伊助が、お梶へ、いろいろと手真似をして、こんどあの護摩堂の西側の壁へ、人柱……それも、母と娘の二人を塗りこめることになった――と、話したことがあるのです。

で、このお梶だけは、お蓮様母娘の悲しい運命を知っている。

五

陸つづきの離れ小島……といったのが、今のお蓮様の生活。

彼女とお美夜ちゃんと、侍女のお梶とたった三人きり。外部とすっかり遮断されて、まるで島流しにされているようなもの。

日に日に親しみがます。

ことに、お美夜ちゃんは。

外へ遊びに出られない退屈さ。遊びざかりの子が毎日雨にとじこめられているようなもので、朝からお梶を相手に、ままごとやら隠れん坊やら、かあいいはしゃぎ方。