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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
萩乃とは、ひとつ屋根の下に起き臥ししているというだけで、今もこの深夜に、萩乃は、長い廊下の奥の自分の部屋に、ただ一人、どんな夢を見てか――。
枕行燈に羽織を引っかけ、こっちへ向いたほうだけ燈芯の灯をむきだしにして、床にはらんばいになったまま、何やら書見をしていた源三郎は、廊下をこきざみに摺ってくる跫音に、上半身を起こし、
「なんだ」
同時に、襖があいて、二、三人の興奮した若侍の顔が、すき間に重なり合い、
「林念寺前のお上屋敷の者どもが、一風宗匠の代参の婦中を駕籠に乗せまして、上野よりの帰途、三枚橋において白衣の狼藉者に出あい、ただいま加勢を求めてかけつけてまいりましたが……」
白衣の狼藉者? と、聞くと、源三郎の頭に、ピンとくるひとつの映像がある。
「ハテナ、彼奴ではあるまいか」
ひとりごちた源三郎は、何か心中に、ふと思いついたことがあるらしく、
「今からかけつけたのでは、まにあわんであろうが――誰がまいったのだ」
「高大之進手付きの尚兵館の者ども二名」
「よし、二、三人ついてこい」
ニヤリと笑った源三郎が、手早く寝間着をぬぎにかかると、つぎの間からようすをうかがっていた小姓が、すぐ外出のしたくをととのえてささげる。