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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「お美夜という女の子は、いるかの」

ちょうどあがり框に膝ッ小僧をかかえていたチョビ安が、

「お美夜ちゃんは、日光へ行っていねえや。おめえは誰だい。人の家にへえって来るなら、かぶりものを取んなよ」

覆面の侍は、そう言うチョビ安を無視して、

「なに、日光へ行ったと? それは弱ったな、約束があって来たのじゃが」

その声を聞きつけた泰軒、大の字なりに寝そべっていたのが、おきあがって、土間へ首をのばし、

「おお! 貴公は、南町の……」

「シッ! 泰軒坊主ではないか。イヤ、おぬしがここにおることは、あのお美夜と申す女の子が、おぬしの命令でかの壺を、拙者のもとへ届けに来てくれたとき、聞いたのじゃが、まだこの家に居候とは知らなかった。どうした、相変わらず飲っておるな。ところで、あの壺は偽のこけ猿…にせ猿じゃったよ」

と、唖然としている泰軒先生とチョビ安を前に、その小ぶとりの武士は、土間に立ったままつづけて、

「イヤ、それとこれとは、別な話じゃが、そのとき、あのお美夜に、なんぞ褒美を取らしょうかとわしがたずねたところが――」

「うむ、その話は、この泰軒も聞いたぞ。お美夜坊は、何も褒美はいらぬが、家にいるチョビ安という者の親が知れるよう、お奉行の――イヤなに、貴公の手で、その親を探してもらいたいと頼んだという……ここにおるのが、すなわち