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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
源三郎と左膳が、生きているか死んでいるか、それを見きわめるひまもなく。
泰軒先生は、丸太を投げすてて穴のふちへとんできながら、
「ナニ、水がわいたと」
「ハイ、このとおりです」
なるほど、夜目にはハッキリと見えないが、泥をとかした真ッ赤な濁水が、まるで坊主頭がかさなるように、ムクムクわきあがってきて、穴は、もういっぱいの水。
アレヨアレヨと言うまにあふれあふれて、まわりに立つ人々の足を没せんばかりの勢い……。
「ふしぎなこともあるものだ。これでチョビ安の父親も、もはや命はあるめえ」
「居候の小父ちゃん、なんとかしてお父上を助けてよ。あたい、この水の中にもぐろうか」
「馬鹿言え。下から噴き上げる水へもぐっていくのは、よほど泳ぎの達者な者でも、むずかしいとされている」
言いながら、泰軒先生が見まわすと。
例の指揮者の石金です。帯をといているんだ。
帯といっても三尺……そのよれよれの三尺をといた石金、大声をはりあげて、
「ヤイ、みんな、帯をとけ」
長屋の連中のことだから、算盤絞りかなにかの白木綿の三尺――一同それをといて、つなぎ合わせてみたところで、長さはしれている。