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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

何もはいっていない。

もとより、煙も出ない。

拍子抜けのした玉手箱……吉宗公は壺をひっくりかえして、底をポンポンとおたたきになっては、首をかしげてしきりに音を聞いてらっしゃる。縁日で桶を買うようなかっこうだ。底が二重になっているかどうか、それをあらためているのです。

越前守と愚楽は、笑いの眼をかわしたのち、愚楽が、

「どうです、上様。底に種仕掛けはございますまい」

「イヤ、これは降参いたした」

吉宗はそう言って、壺を畳へ置きなおし、

「この壺に秘図が入っておらんとなると、柳生の埋宝それ自身がちとあやしい話じゃな」

「そう……かもしれません」

「かもしれんではないぞ、愚楽。柳生はああいう武弁一方の貧乏藩じゃが、先祖の隠した大金がある。それをそのままにしておいては危険じゃから、日光を当てて吐き出させてしまえ――と、余に向かってそう進言したのは、愚楽、其方ではないか」

「ヘエ、上様のおっしゃるとおりで」

「ヘエではないぞ。それで、ああして柳生の金魚を死なしたのじゃが、日光をふり当てられた柳生では、一風とやら申す茶師の言を頼りに、それ以来、死にもの狂いでこれなるこけ猿の壺の行方をさがし求めてきた……これ、その壺をいまあけてみれば、ただ空気がはいっているだけとは、愚楽、これはすべて貴様の責任だぞ」