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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
むりな理屈だが、楽しみにしていた壺をひらいてみると、何も出てこないので、吉宗公、ちょっと駄々をこねはじめたのかもしれない。将軍をはじめ、昔の大名なんてものは、みんな、子供のようなわがまま者が多かった。
あわてるかと思うと、さにあらず、愚楽老人は平然として、
「上様、蓋をまだお持ちでございますな」
ときいた。
なるほど……気がつくと、八代様はさっき蓋をあけたとき取った蓋を、そのまままだ右手に持っていらっしゃる。
「ウム、これが――これがどういたした」
と吉宗は、つくづくその蓋をみつめている。
御存じのとおり、茶壺の蓋は、木をまるくけずったものであります。それに、奉書の紙が、一枚一枚と貼りかためてある。
「別になんの奇もない、ただの茶壺の蓋ではないか」
と吉宗は、それをポンと畳へほうり出した。蓋は、ころころと輪をえがいてころがりながら、越前守の膝先へ来て、ピタリと倒れた。
手にとった忠相は、おそるおそる口を開いて、
「毎年、新茶の候になりますと、諸藩から茶壺を宇治の茶匠へつかわします。茶匠はなかなか権威のありますもので、おあずかり申した諸侯のお茶壺を、それぞれ棚がありまして、それへ飾っておくのでございますが、そのとき……」