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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

そこまで読んだ八代公は、紙片から顔をあげて、のぞきこんでいる愚楽と越前守を見まわした。

「ところどころ虫が食っておって、よく読めぬ。わからん個所には字を当てて、判読せねばならぬが」

横合いから、愚楽老人がスラスラと読んだ。

「常々あれば心驕りて湯水のごとく費い、無きも同然なるは黄金なり。よって後世一朝事ある秋の用に立てんと、左記の場所へ金――サア、これはわからぬ。八百万両やら八千万両やら、それとも八十五両やら、とにかく、八の字のつく大金」

「シテ、その埋ずめある場所は?」

忠相の問いに、八代公は、その古びた紙を灯にすかして見ながら、

「武蔵国――アア、どうしたらよいか。このとおり虫が食っておってあとは読めぬ」

愕然として他の二人は、同時に左右から首をさしのべて、

「いや、それはたいへんなことでござります。せっかくここまでこぎつけたのに、肝腎の個所が虫食いとは……?」

「図のほうではわかりませんか」

文字の下に、小さな地図がついているのだけれど、それはいっそう虫のくった跡がはげしく、ほとんど何が書いてあるかわからない。

消えた線を、指先でたどっていた吉宗、

「これはハッキリ読めたところで、たいした頼りにはならぬであろう。