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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
「これほど用心をして、大金を隠した初代の柳生、念には念を入れたに相違ない。これはことによると、同じようなこけ猿の壺が、まだほかに、一つ二つあるのかもしれませぬぞ」
「考えられぬことではない」
と沈思の底から呻いたのは、八代吉宗公で、
「大切な手がかりを、ただ一つの壺に納めたのでは、紛失、または盗難のおそれもある。戦国の世の影武者のごとく、同じような壺を二つ三つ作り、そのうちの一つに真実の文書を隠しておくということは、これは、ありそうなことじゃわい」
どうやら、三人の話の模様では。
この壺もほんとうのこけ猿かどうか、危くなってきた。
そうすると……。
あの、最初に婿入りの引出物として、伊賀の暴れん坊が柳生の郷から持ってきたあれも、果たして本当のこけ猿? もしあれが真のこけ猿の茶壺でないとすれば、本物はまだ柳生家にあるのか?――
無言の三人のうえに、城中の夜の静寂が、重い石のようにおおいかぶさる。
「ま、壺の真偽は第二といたしまして、日光を眼の前に控えて、柳生は今や死にもの狂いのありさまでございますから、御造営に必要なだけの金は、さっそく、それとなく授けますように、お取り計らいを願いたいと存じまする」