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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

異母兄は熱田で生れたとみゆる。――わしも由縁の深いそこへ行って、男になろうと思うのじゃ。吉次、これより熱田路へ参ろうよ」

「え。男になろうとは」

「元服するのじゃ。――十六、あやうく髪を剃ろされるところであったが、その髪を男立ちに揚げ、初冠ないただこうと思う」

「いや。それは」

と、吉次はあわてて、

「もすこし、時を待って遊ばしませ。これよりあなた様が頼って行く先のお方は、富強ご威勢、平相国にも劣らぬといってもよい奥州平泉の藤原秀衡様です。――その秀衡様を、烏帽子親と頼み参らせて、元服なされたがようござりましょう」

「…………」

「お嫌ですか」

「…………」

「元服の事ばかりでなく、何もかも、秀衡様へ縋るのが一番です。秀衡様のご庇護に依らねば、生きても行かれません。杖とも柱ともお縋りいたしまする。――という風に、あわれを見せかけると、人間というものは、ついほだされるものですからね」

「いやだ」

少し気色も直して調子づいて来た吉次のことばを、牛若はまた、膠もなくヘシ折って、

「秀衡を、烏帽子親にして、人となったら、後にわしが源家の一族の上に立っても、秀衡には頭が上がらないだろ。