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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
聞えたので、集まった兵もたちまち四散し、身さえ危うくなったので、
(かかる上は、ただ一人でも、敵の清盛か重盛か、何れかに近づいて、父や一族の恨みをはらし、義朝の子らしい死に方をしよう)
と思い定め、密かに京都へ引っ返して、六波羅の近傍を彷徨っていたところ、たちまち平家の捕吏に発見されて、六条河原に曳き出され、可惜、二十歳の春を、無慚にも首斬られてしまった――と語るのであった。
泣き腫らした瞼を上げて、頼朝は夢かと疑うような面もちで聞いていた。
もう泣いていなかった。
泣け、といっても泣きそうもない顔していた。かえって、
「おわかりかの」
と、大炊は泣き洟をかむし、延寿もすすり泣いてしまう。
「源家の正しいお血すじと云っては、もはや和子お一方とはなったのじゃ。都のあたりに、常磐どのの公達とか、和子とは腹ちがいのご兄弟があるそうなが、まだお乳も離れぬ幼な児ばかりと聞いておる」
ついつい洟をかんだり眼を拭いたり、しどけなく独り語っていたが、大炊がふと、寂として答えもせぬ頼朝の姿を改めて見直すと、何かしら今度は自分がたしなめられているように、恥ずかしい心地がした。