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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

「おのれ」

と、山木兼隆は、前後の弁えもなく、怒りに燃えた。

「すぐ行け」

とばかり、何百という家の子郎党は、彼の命をうけるや、先を争って十国峠へよじ登った。

一方、早打ちをうけて、伊東入道祐親も、手勢をくり出して、網代をこえ、熱海口をふさいだ。

――が、山木勢は、峠づたい、伊豆山へかかろうとすると、途中一隊の軍勢にさえぎられて、そこから先へ進む事ができなかった。

「通るなら弓矢にかけて通って見よ。ひとりも生かしては帰さんぞ」

と、生命知らずな面がまえが、高原に列を布いて喚くのだった。

旗じるしもない、大将らしい者とて見えない。まったくの烏合の勢にひとしく、得物や物具も雑多だったが、ただ若い肉体は見事に揃っていた。そして凄まじい争闘心がどの眼にもぎらついているのには、山木勢も胆を冷やした。

「各※(二の字点、1-2-22)はどこの何者の郎党なのか」

そう訊ねても、

「何者の家人でもない」

と云い、

「何故、道を阻むか」

と、糺しても、

「通すわけにゆかぬから通さぬまでの事。通りたければ弓矢で来い」

と、いう暴言ぶりである。

山木方でも、血気なのは、

「押通れっ」