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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

て薨ぜられてしまわれた。

かくて、せっかくの計画も、一朝に壊滅の惨を見、またしても、平氏輩に「平家に弓をひく者はみなこうぞ」と、いやが上にも思いあがらせてしまう事とはなり終った――。無念とも何とも申しようがない。洛中はなお戦乱の余波に騒擾を極めているが、取りあえずお知らせする。くれぐれも、自重してたまわるように――。

といったような報告で、その長文の文字のなかに、宇治川で死んだという頼政の顔や、幾多の先駆した精霊が、目に見えるような気がした。

その夜は。

頼朝から忍んで、北条家の館へゆき、時政と会って、夜明け前に、彼は配所へそっと帰っていった。

「……ああ」

終日、彼はものも云わず、眸にも力を欠いて坐ったきりでいた。

それから六月にかけて。

乳母の妹の子にあたる三善康信やら、その他の京都にある縁者から、次々と、飛信が来た。

みな、こんどの大変を細々と書いて、そしていい合せたように、

(伊豆とても、安心はなるまいぞ。身を大事に、万一の備えを)

と、それとなく、彼の身辺の危急を注意してよこした。

三

頼朝自身も、刻々と、自分の生命が、もう草叢の陰に、無事をゆるされない危うさに来ていることを自覚していた。