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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

陽なたの彼は生物だし、彼方の墓石は永遠の死の群像だからであろう。

初めのうちは、死者と自分は、区別がついていたが、いつのまにか分らなくなって来た。

「……どっちが生きているんだろう? いつまでも」

そんな気がしだして来た。

なぜなら、白骨となっても、生きているものが無数にある。形はないが、文化の流れに、国土のうえに、その仕事や精神を、不朽にのこしている人々の生命力は、過去とはいえ、死滅しないものである。

「……おれは?」

どう生きても十年か二十年にすぎない自己の肉体をながめまわした時、吉次の心は、生きる力とも信じ、歓びともしていた国元の莫大な財産が、そこらの日陰に積もっている落葉の山に思われて来た。

「……変だぞ、今日は」

気を持直すつもりで、起って、本堂のほうへ歩いて行った。すると、わずかな野辺の送り人にまもられて、一つの柩が、お堂へ担いあげられて来た。

「――喃。潮音さんも、ひと頃は、平家の公達衆にもえろう噪がれたほど、美しい白拍子じゃったが、儚いものよの」

会葬者の一群は、寺の縁にかたまって、鐘の鳴りだすまでの間を、のどかに語りあっていた。

三

その日、四月十二日、頼朝夫妻は、亡父義朝の新廟――南御堂の柱立の式に臨場していた。