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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
ようやく、貧乏を脱し、人々を見かえし、他人が若い頃に通った青春を、彼は四十過ぎての今、迎え始めた気もちなのである。燃ゆるばかりの元気だった。途方もない大きな設計図を日本中に画いてみたり、そうかと思うと、小さい衣食住などに恋々として、何かにつけ慾というものが旺んである。
物を喰うにもがつがつと飽食はするし、一族や子等の前でも、平気で女のはなしなどをやったりする。――ふと、その中に重盛が、浅ましげに眉を顰めてでもいると、急に気づいて話をそらしてしまったりはするが。
――とにかく。そういう父と子であったから、頼朝助命の嘆願は、誰が考えても、重盛をおいて他に人はないほど適任らしく思われたが、事実に当ると、かえって清盛の不機嫌と強情を募らせてしまった。
重盛もまた、禅尼と同じように、梅寒き夜更けを、空しく小松谷の館へ、黙々と帰って行った。
その翌々日頃であった。
九条院のうちへ、三児を抱いて常磐がかくされて、やがて自首の旨を、六波羅へ訴えて出て来たのは。
三
常磐が捕えられて来たと聞いた日から、清盛はしきりと、
「今まで、どこにいたか。どうして遁れていたのか」