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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
「滅相もない」と、建立奉行の藤木権之助は、恐れるように手を振った。
「畏れながら、かように工事の早く運んだのは、殿のご威光もさることながら、ひとえに上人の徳が人をうながすものと思われます。――御覧じませ、あちらの作事場を――あのように幼い女子供から、髪の白い老人までが、賃銀も求めずに、しかも嬉々として、石を運び、材木の綱を曳いております。なお、この近郷の者ばかりでなく、伽藍建立の噂がつたわると、招かずして、遠国から、無数の信徒が集まってきて、お手伝いをさせて賜われと、これも、慾得なく働いているのでございます。――これには私も、心のうちで、実は驚き入っておりまする」
二
「そうだ……」城主の大内国時はうなずいて、
「わしの国が今、かりに戦いに亡んで、二度ここに下野城を築こうとしても、武力や財力では、この真心を集めることはできない」
「この工事を奉行いたしてから、私も、心から、念仏に帰依いたしました」
「権之助、おまえも、そう考えてきたか」
「あの真心のもとに打つ手斧の音――あの信念そのものの姿で働いている法師たちや門徒の者を見ては」
「そちは、そちの胸にも、たましいの伽藍を建てたのだ」