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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

二

おもとも、不埒な駈落ち者などに関っておらずに、専心勉学をされたがよい。当人たちが困ろうと、飢えようと自業自得であり、むしろ生きた学問となろう。親のことばより実際の社会から少し学ばせたほうが慈悲というものだ。迎えの使いなどは断じて出さぬ)というのである。

二

手紙の一字一字が養父の顔つきであり声であるように範宴には感じられた。慈愛をかくして峻烈に不肖の子を叱りながらもどこやらに惻々と悩んでいる厳父のこころが傷ましい強さで、(かまいつけるな)といってある。

しかし、手紙の養父のことばを、そのままに解して、自分までが厳格な態度をとったら、弟は、どこへ行くのだろうと思った。おそらく、死を選ぶほかに彼の道はないのではないかと考えた。

性善坊が案じるのもそれだった。恋というものは熱病のようなものである。健康な人間が、自分の健康な気もちを標準にして荒療治をしようとすると、若気な男女は、春をいそぐ花のように、夢を追って身を散らしてしまうことをなんの惜しみともしないものである。その弱い木を揺りうごかして、傍から花の散るのを急がすような心ない処置をとっては、なんにもならない。