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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

九

「臆病者っ、答えをせぬか。寿童冠者が勢いに怯じて、音も出さぬとみえる。――皆の者、石を抛れっ、石を抛れっ」声がやむとすぐ、ばらばらっと、石つぶてが、館の廂や、縁に落ちてくる。一つは、宗業の肩を打った。

「なんじゃ、あの業態は?」介は、睨めつけて、

「おのれ」と、口走った。そして太刀の反りを打たせて、

「おうっ、たった今、出会うてやるほどに、そこ、うごくなっ」

九

血相を変えて、介が、出て行こうとする様子に、宗業は驚いて、彼の太刀の鞘をとらえた。

「これっ、どこへ参る」

「あの悪口がお耳には入りませぬか。最前は、十八公麿様にお怪我をさせてはならぬと、じっと怺えて、お館の内へ逃げこんでは参りましたものの、もう堪忍はなりませぬ。介は、斬って出て、斬りまくってくれまする」

「逆上したか、相手は、平家の侍の子じゃぞ」

「あの嘴の黄いろい小冠者までを、思いあがらせている平家の横暴さが憎うござります。素ッ首斬って、介が、斬り死にしましたら、少しは、見せしめになって、世間の人が助かりましょう」

「用もない生命を捨てるな。蠅が小癪にさわるとて、一匹二匹の蠅をたたいたら、数万の蠅がうるさいしぐさをやめるであろうか。