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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

八

「おお、無事か」

「怪我はなかったか」一家が、こぞって転ぶように縁先へ出てきた。

先に逃げ帰った車の牛飼から、途中の変を聞いて、おろおろと案じていたところだった。

その危うい野火の中から、十八公麿を救って、ここまで負ってきてくれた男が、以前、成田兵衛の郎党だった庄司七郎であったと話すと、範綱は、

「さてこそ……」と、思いあわして、うなずいた。

「ここの厩舎の獄から、縄を解いて、放ってやった七郎というあの侍は、その後、主家の兵衛から、役に立たぬ不届き者と、家をも扶持をも奪われて牢人となり、菰僧に落ち魄れていると聞いたが……。それでは、当時の和子の情けや、当家の恩義を忘れかねて、あやうい機に、働いてくれたとみえる。人には情けをかけておくものじゃ、ありがたいお人ではある」

彼が、介や箭四郎たちに、そう語っているあいだに、吉光の前は、十八公麿をつれて、坪の石井戸のそばに立たせ、下碑の手もからずに、自身で水を汲みあげて、よごれている足や手を洗ってやっていた。

そして奥の部屋へ、抱き上げてくると、衣服を出して、着かえさせたり、摺り傷をあらためて、薬を塗けたりして、