轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
二
彼の心には常にこの山があった。この山は範宴にとって、心の故郷なのである。
二
鷺のように風に吹かれて佇んでいる二人の女性があった。雲母坂の登り口なのである。ここから先は女人の足を一歩もゆるさない浄地の結界とされているのだ。
千年杉の鬱蒼とつつんでいる登岳道も、白々と夜明けの光に濡れていた。
「姫さま、お寒くはございませぬか」
自分のかぶっている被衣を一方の女性へ羽織ってやろうとする。これを拒んでいるのは上笠に顔をかくしている姫と呼ばれた人であった。年ばえもうら若いし、足もとや体つきまでがいかにもこんな所のあらい風には馴れぬらしい嫋かな姿なのである。
「いいえ」と、微かにいう。
「そなたも、寒かろうに」
「なんの私などは」どこの女性でどういう身分の者なのであろうか。今ごろ、まだ夜も白みかけたばかりなのに、里から登ってきたとは思われぬし、なおのこと、上から降りてきたのではあるまい。思うにこの若い二人はゆうべすぐそこの赤山明神の拝殿にでも一夜の雨露をしのいだに相違ない。四明ヶ岳の壁にはまだ残雪の襞が白く描かれているが、この辺りではもう寒いというには足らない春のことである、その証拠にはあちらこちらの沢や谷で鶯の啼声がしぬいている。