轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
二
この後宮を見まわして、どこに、真実の人間らしい生活が少しでもあるか。飢えや、寒さや、汗を流すことを知らない世界には、また、人情の発露もない、同情の涙もない、物に対する欣びもない。
すべてがカサカサなのだ。有り余るものは、腐えたる脂粉のにおいである。絖や錦や綾にくるまれた棘である。珠に飾られた嫉視や、陥穽である。肉慾ばかり考えたがる彼女らの有閑である。
「もう、泣かないで……」松虫は、そのくせ自分も共に、泣いているのだった。抱き合って、
「もう、泣きますまい。泣いたとて、この運命が、どうなりましょう」
「阿難を伴れた釈尊が、ふいに、この御所へ来てくれないものでしょうか」
「ほんに、いつか鹿ヶ谷で聴いた法話を思い出しますね」
「ここに、釈尊がお出であそばしたら、何というでしょうか」
「眉をひそめるでしょう」
「印度の何とかいう王子のお城の中で仰っしゃったように、私たちの生活に面を反けるに違いありません。……ああどうにかならないでしょうか」
「どうにかとは」
「生きることです」
「でも、生きてだけはいるではありませんか」
「いいえ、これは、人間の生きているすがたではありません。