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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

四

四

かすみの上に、妙義の山の峨々とした影が、淡むらさきに眺められた。

碓氷川の水にそって、松井田をすぎ、四辻という部落まで来ると、

「おや」摺れちがった一人の旅僧が、踵を回してきて、

「もし――」と、声をかけた。親鸞と弟子たちの五名も、その旅僧のすがたが、念仏僧らしかったので、何とはなく、振向いている所だった。

「オオ!」眸と眸とを見合すと、旅僧は飛びつくように、親鸞の脚もとへ来て、

「もしや、あなた様は、越後路からご上洛の途中にある親鸞御房ではござりませぬか」といった。

親鸞は、見忘れていたが、西仏は思い出して、

「あっ、そう仰っしゃるは、明智房ではないか」

「おお、西仏御房か。……あやうくお見違え申すところでした」

「久しいのう。これにおいであそばすは師の上人じゃ」

「では、やはり」と、明智房は、あわててそこへ両手をつかえかけた。――が、人々に誘なわれて、傍らの地蔵堂の縁へ寄り、思い思いに足をやすめた。親鸞は彼にたずねた。

「おもとには、何ぞ、都のたよりを聞いておられぬか。何より知りたいのは、師の法然御房の消息じゃが」

「さ……そのことでござります。実は私は、念仏停止のため、都を追い払われてから、この先の赤城の麓に草庵をかまえておりましたが、このほど、恩師法然様が讃岐よりご帰洛と聞いて、すぐ都へ馳せ上り、そしてまたも、