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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
四
四
「いうてみい」慈円はいった。
「――身にかなうことならば、ほかならぬ六条どのの頼み。――してどういうことな?」
「……実は、この十八公麿に、お得度を賜わりまして、末ながくお弟子の端にお加えくださるわけには、参りますまいか」
「ほ……」慈円は、眼をみはって、
「この端麗な童形を、あたら、剃りこぼちて、僧院へ入れたいと、仰せらるるか」
「されば、幼少からの仏心の性とみえて、常に、御寺を慕うています」
「さあ、それだけでは」
「ことに、母を亡うてから、なおさらに……」
「あいや、六条どの、それは稚な心というものではないか。母に仏心あれば、子に仏心のうつること当然、家に仏音あれば、子の声に仏韻の生じることまた当然。――すべて稚な子は、澄んだ水でござる。それを、奇瑞の、奇童のと、見るのはすでにわれら凡俗の眼があやまっている。――あらゆる童心はすべて仏性でござろうぞよ、おわかりか」
「は……」
「それを、老成の者が、この子、仏者の縁がふかいなど思いすごして、僧院の沙弥になされたら、成人の後、どう恨めしく思うやも知れぬ」
「御意に相違ありませぬ」
「せめて、自身を自身で考えられる年ごろまでお待ちなされ。