轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
五
「キ、斬ッた……」手斧をだらんとぶらさげたまま、彼はよろりと御堂の扉へよりかかった。そして、しばらくは茫然と眸をひらいて白痴のような口を開いていたが、何か、冷やっこいものが、額から顔へかけて、たらたらと流れているのに気づいて、
「血……血だッ……」掌で、彼は顔をこすった。――と、彼の酒気はすっかり醒めていたのである、ぶるるッと、背ぼねから慄いを立てて、
「――オ、オ吉っ」と、うつろな声でよんだ。
急に、身の毛がよだってきたらしい。平次郎は、きょろきょろと鋭い眼を闇にくばった。――手にさげている手斧の白い刃をながめた。
「あーっ、おれは」大変なことをしてしまったと彼は初めて気がついた。自分のすがたが自分の眼に見えてきたのである。
「……わ、わ、わ、……われアあ、どこへ行った、お吉っ」怖々、欄干からのぞいてみると、永年、連れ添ってきた妻は、暗い墓場の穴みたいな闇の底に、死骸になって仆れている。
よろよろと、平次郎はあゆみだした。――眼も、耳も、口も、ぽかんとうつろにしたまま。
一段一段、彼は、悔悟の階段を下りてゆく。
――しかしもう悔いも男泣きも間にあわない。