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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
五
上人様以下、念仏門の諸信徒と諸檀家に対して」彼はすぐ、頭のしんで、
(死!)と意識したが、
(死ぬくらいなことで、このお詫びができようか)と、もっと重い苛責を心のうちで求めた。
念仏停止の官命。
一声もこれを許さず――とあるこの峻厳な朝命。
その禍根が、自分と住蓮の二人のことから起ったのはいうまでもない。
「そうだ」彼は、高札の前から、よろよろと立ち上がった。悽愴な決意が、その顔を月より青く見せていた。
「――自分の行為を、明らかに官へ申しあげて、衷情を訴えて、上人の罪をゆるしていただこう。せめて……せめてそれが……」残酷にまで、冬の月が、彼の蹌踉として行く足もとを照らしていた。
西洞院の西評定所の門には、赤い篝火が消えかけていた。閉まっている門を打ちたたくと、
「たれだっ」と、べつな小門から侍が顔を突き出した。
「おねがいあって参りました。鹿ヶ谷に住む安楽房という者です。自分のいたした罪状について自首いたして出ました。御奉行にお会わせ下さい」
「なに、鹿ヶ谷の」わらわらと四、五名の侍たちが彼の両手を扼して、
「おおっ、安楽房っ」意外な獲物に、
「はやく」一人が眼くばせする、一人が評定所の奥へ駈けこむ。