轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

憂春

一

(はやく春が来ればいい)とか、

(こう寒くてはやりきれぬ)とか、そんな弱い、今日を空しくして先ばかりを空望するような声は、この小丸山の法室ではまったく聞かれなかった。

一日一日が、法悦の日だった。どうしてここが流人の住む配所だろうかと疑われるくらいに。そうして、今年も、また、幾年目かの春は巡ってきた――

「石念、だいぶ採れたな」

「もうよいでしょう」師の御房は、韮がお好きだ。

「冬ごもりの間は、乾物ばかり召しあがっておいでだから、こんな青々した木の芽や菜をさし上げたら、きっとおよろこびになるだろう」

まだ渓谷には雪があったが、南へ向っている傾斜の崖には、朽葉の下から蕗や若菜がわずかに萌え出ていた。

「ひと休みしよう」籠に摘んだ韮や蕗をそばへ置いて、石念と西仏は、崖の中途に腰をおろした。山すその部落は紫いろに煙っているし、木々の芽はほの紅く天地の力を点じている。

「西仏どの」まばゆげな眼をして、陽を仰いでいた石念がふいにいった。

「春は苦しいものですね」

「どうして」

「どうということなしに、春になると、私は苦しい気がします。若い血が暴れ出して」

「そうか……」西仏は年老っていたが、二十六、七歳の石念のそういったことばには、思い当るところがあった。