轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
四
「お帰りになるそうだ」といって狂喜した。
小幡民部から性善坊につたえられ、性善坊はその報を持って、
「覚明」と、友の室へ駈けこんだ。そして、
「師の房が、おもどりになるゆえ、迎えにこいというおてがみだ」と告げると、覚明は、
「ほんとか」と、眼をみはった。
よほどうれしかったのであろう、またそれほどに今日までの一日一日が憂惧の底であったにちがいない。
「よかった」と抱き合って、ふたりは泣いた。
四
山南天の実が赤い。
藪蔭の陽はもう暖かな草萌えのにおいに蒸れていた。
「ここじゃ」大乗院の山門の額を仰いで、人々はほっと汗ばんだ息をやすめた。
「ようこんな廃れ寺で、一年もご辛抱なされたものだ」と、覚明がうめいていう。
坊官の木幡民部を初め性善坊やその他十名ほどの弟子たちは、そこを入る時から胸が高鳴っていた。玄関へ向って、
「聖光院のお留守居の者ども、お迎えに参じました。師の御房へおつたえして給われ」
堂衆が、奥へ入って行く。やがて、
「御本堂へ」と、一同を通した。
明けひろげた伽藍の大床には、久しぶりで四面からいっぱいな春光がながれこんでいた。
だが、ふと内陣の壇を仰ぐと、御厨子のうちには本尊仏もなかった、香華の瓶もない、経机もない、龕もない、垂帳もないのである。