轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
宣戦
一
「――満山の大衆、こよい、山門へ立ち廻られよ」と呼ぶ。
(承知)という返事の代りらしい。
「もっとももっとも」と、ここでも同じ答えがする。
これが、叡山名物の、いわゆる「山門の僉議」の布令なのである。
その布令が、きょうも夕方のうす暗いころに廻った、四明ヶ岳の雪もすっかり落ちて、春の夜のぬるい夜靄が草むらや笹叢から湯気のように湧いている晩である。――やがて初更の鐘が合図。
暈をかぶった月が淡くかかっている、月は円くなかった。
「おうい――」
「ほーい」互いに、影を見て呼び合いながら、谷から、沢から、峰の中腹から、思い思いに頂の根本中堂をさして上ってゆく法師たちの影が、まるで猿のように見出される。
集まる場所は、いつでも大講堂の広場ときまっているのだ。
「ほーい」
「おうい」梟のような鼻声を交わしながら、途中から、めいめい、手ごろな石を担いでそこへ群れてくる。そして芝地の露へ、
どすん、どすん、石を抛る。
それが座席である、彼らは、その石のうえに腰を下ろし、入道杖を前に立てて、うんうんと眼を光らし、口をむすんで、燈火もない大講堂の階段を中心ににらまえているのだった。