轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
脱走
一
十一月の大地は凍てきっていた。夜霜はその珠のような足を刺す。しかし、ふたりはその痛さも冷たさも覚えないもののようであった。
「あっ……松虫さま」
「どうしました?」
「何か踏んで……」
「え、踏んで?」
「芒の根です」
「まあ、血が――」と松虫は、鈴虫の足もとへ身をかがめて、布を裂いた。
自分の肩にすがらせて、彼女は年下の鈴虫の足を布で縛ってやる、布は血ですぐに紅くなった。
「すみません」鈴虫は、涙ぐんで、
「――勿体ない」と何度もいった。
「なんの、お互いです」跛行をひいて歩く鈴虫の腕を抱えて、二人は糺の森をいそいだ。
樹蔭に入ると、真暗だった。いつもなら、松明にかこまれても怖くて通れそうもない道である。それが、少しも意識にならないばかりか、大きな光明が彼方に見える気持すらするのである。
友の腕を授けてやったり、凍てた大地に血をこぼして歩くだけでも、二人は、何かしら充ち足りてくる生命のよろこびを感じるのだった。急激に生きている身であることを全身で知ってくるのだった。
森を出ると、狐色の枯れすすきに、細い月影が一すじの小道を見せている。道はだんだん登りになる。やがて、鹿ヶ谷は近いのであった。