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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

五

「では、そのもとの考えは」

「わしは、助けたい」

「助けたいのは、この住蓮も同じだが、その方法があるまい」

「わしは、とても、ああまで縋ってきた者たちを、山荘から突き出すには忍びない」

「では、望みを容れてやろうというのか」

「ウム……」

「もってのほかだ」住蓮は、声を励まして、

「わしも若い、そのもとも若い。しかも清浄を尊ぶこの山荘に、あんな麗人を二人留め置いたら、世間は、何と見る?」

「御弟子にしてくれというているのだから、二人は、麗しい黒髪も剃ってしまう覚悟じゃないか」

「それにしても」と、住蓮は、闇の中でつよく顔を振った。

「女と、男ではないか。――しかもお互いが若いのに」

「ちがう、ちがう!」安楽房も、友のことばにつれて、ひとりでに声が激して行った。

「そういうおん身の考え方は、浄土門でもっとも忌み嫌う聖道門的考えかただ。師の上人のお教えでは、男女の差はないはずだ、そういうけじめを捨てよという所に念仏門の新味もある、狭い旧教とちがった意義もあるのだ」

「わかっている。――だが、世間は」

「おん身は、この処置を、世間へ訊くのか、御仏の心に訊くのか」

「ウム」と、住蓮は声をつまらせて、