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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

七

「こいつ、胡魔化し言をいうて、このほうを、小馬鹿にいたすな」

「決して」

「じゃあ、嘘か、真か、はっきりといえ」

「いえないものは、いえないではございませんか」まだ、登岳してから、半年も経たない新参なので、性善坊は、できる限り、辞を低く答えてはいるけれど、根が、侍である。公卿の館にはいても、太刀をさしていた人間の根性として、余りに、相手が横柄であったり、人をのんでかかってくると、つい、憤っとするものが、こみあげてくる。

七

「知らぬことはあるまい。いわなければ、ここを通すわけにはいかん」と、妙光房は、くどいのである。立ちはだかって、性善坊を責めていた。

すると、そこの坂道を、降りてきた一人の堂衆が、

「やあ、妙光房」と、声をかけた。

「おお朱王房か」

「何しているのだ」

「何、今ここで、範宴少納言の弟子という性善坊に出会ったから、例のことを、糺しているところだ」

「あの問題か。さりとは、貴公のほうが、よほど迂遠だぞ」

「どうして」

「たった今、一山の諸院と各房へ宛てて、中堂から、触れ状がまわった。――今、それを見てきたが、この月二十八日に、少納言授戒入壇の式を執り行うによって、そのむね、心得ありたしとある」