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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
山法師を討つと見せて、平家一門へ私怨と公憤の火ぶたを切ろうとする密策なのであって、刻々と、夜の迫るのを、待っていた。
そこの仙洞御所と、清盛のいる西八条の館とは、目と鼻の先だった。物々しい弓馬のうごきは、すぐ六波羅の御家人から、
「何事か、院の内外に、侍どもがただならぬ軍支度にござりますぞ」と注進されたが、すぐ、次々に来る物見の者からは、
「あれは、先ごろからの強訴一件で、院のおさばきに楯つく山門の衆を捕り抑えよと令せられて、それで御発向の兵馬と申されておりまする」と、訂正した報告が、一致していた。
清盛は、聞くと、
「さもあるはず」と、うなずいた。
誰が、自分のすぐ足許から、平家の今の権勢に対して、弓をひくほどな不敵な行動をしようと、安心しきっているのであった。ところが、
「お取次ぎねがいたい。折入って、火急、相国へお目どおりの上で、一大事を、お耳に達したいと駆けつけてきた者でござる」と、息をきって、西八条の邸に訴え出た者があった。侍たちが、
「名は?」と問うと、
「院の北面に勤えまつる多田蔵人行綱でござる」と、いった。驚いて、その由を、主馬判官盛国まで取次ぐと、