轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
介は、思わず眼をそらした。
曠野は、真っ赤に染まっている。誰か来て消さない以上、この火は、あしたの朝までつづくかも知れない。
それにしても、十八公麿が、こちらに見えないのはまだ不安である。安心するには早すぎる。一人で、六条まで帰れるはずはないし、さだめし、どこかで泣いて、自分の姿をさがしているにちがいない――
「おうっ――いッ」介は、両手を唇のはたに当てて、全身の声で呼んでみた。
「和子さまあッ――」返辞はなく、声は、いたずらに、野末のあらしになって、真っ暗に、消えてゆく。
「…………」呼ぼうとして、涙が、眼につきあげてきた。もしものことがあったらどうしよう、腹を切って、おわびをしても済まないことだ。
さっきの牛よりも、狼狽して、狂気じみた彼の影が、それから脱兎のように、野を駈けまわったが、十八公麿は見えないのである。
「どこへおいで遊ばしたぞ。――介はここにおりますぞ。十八公麿様っ」声も、おろおろとしてくるのであった。
すると、河岸へ寄った堤の上を一人の男が、誰やら、背に負って走って行くのが見えた。堤の下まで、炎は這っていたし、空が赤いので、黒い人影が、はっきりと介の眼に映じた。