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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

三

「よし、よし、われらが参って、お若い新座主をたしなめてやろう。……誰でも、一山の司権の座にすわると、一度は、その権力を行使してみたいものだよ。……騒ぐな、必ず説服いたして、思いとどまらせて見せる」

年齢と苔の生えているような長老や、碩学たちが、杖をついて、根本中堂へ上って行った。

そして、座主に、面談を求めて入りかわり立ちかわり、少納言の入壇授戒を、反対した。

今日もである。

静慮院と、四王院の阿闍梨が先に立って、その中には、少壮派の妙光房だの、学識よりは、腕ぶしにおいて自信のありそうな若い法師たちが、中堂の御房の式台へ、汚い足をして、ぞろぞろと、上がり込んで行った。座主の僧正は、

「おう、おそろいで」と、にこやかに、書院をひらいて、待っていた。

ひろい部屋の三分の一が、人で埋まった。みしみしと、荒い跫音で入って来た学僧どもも、ここへ入ると、

「さ、そちらへ」とか、

「どうぞ」とか、席をゆずり合って、さすがに、壁ぎわへ、硬くなって坐るのだった。

四王院と、静慮院の二長老が、代表者として、むろん、一同の前へ出て、座を占めた。

毎日のことなので、慈円僧正は、この人々が、何の用事で来たかは、訊くまでもなく、分っていた。