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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

その四教義を講義してくれる人は、東塔第一という称のある篤学家の静厳法印だった。

静厳は、彼の才をひどく愛した。少納言少納言といって、自分の子のように寺務の世話までよく面倒を見てくれた。

するとある日、その静厳が、何か、報らせに来た若い法師たちを罵っていた。

「なに、まだ見つからん。そんなはずはないぞ、山狩りを始めてから、もはや今日で二十日にもなるではないか」

「しかし、木の根をわけても、分らないのです。所詮、この様子では、麓へ走ったにちがいないから、一度山狩りを解いて、世間のほうを探してはどうかと、西塔の衆も、申しておりますが」

「西塔の者は、西塔の考えでやるがよい。こちらは、飽くまで、本人が、食物に困って、姿をあらわしてくるまで、固めを解いてはいかん」静厳に一喝されてすごすごと、谷の方へ下りてゆく法師たちの疲れた姿を、範宴は、一乗院の窓から見ていた。

何のための山狩りか、範宴には、よくわかっていた。で、心のうちで、

(どうか、見つからないように……。無事に、里へ逃げてくれるように)と祈っていた。大雨が降ると、

(どこかの樹木の下で、あの主従は、この雨に打たれているのではないか)と人知れず案じたり、また、朝夕の食事に、箸をとる時も、ふと、