轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
と火の用心を案じる者もあった。
「いや、火の気はないようだ」と一人がいう。
「そうか、それならよいが……。だが、どんな男か」
「まだ、二十歳ぐらいな若い僧さ。三尊の拝殿から入って、いちばん奥の廟窟の床に、ひとりで坐りこんだまま、ものも食わずに、参籠しているのだ」――そんな話を、だまって、眼をふさいで聞いている四十ぢかい僧があった。その僧は、この寺の客とみえて、他の者から、法師、法師と敬称されて、時々、寺僧のかたまる炉ばたにみえて冗談をいったり、飄然として見えなくなったり、また、裏山から木の根瘤などを見つけてきて、小刀でなにか彫っていたり、仙味のあるような、俗人のような一向つかまえどころのない人間のように見える男だったが、太子廟の奥に、この四日ばかり、法華経の声がもれるようになってからは、いつも、じっと、さし俯向いて、聞き入っているのであったが、今、寺僧のうわさを聞くと、なにを思いだしたか、ふいと、その部屋を出て、どこかへ、立ち去ってしまった。
今夜も、まっ白に、月が冴えていた。法師は、庫裡から草履をはいて、ぴたぴたと、静かな跫音を、そこから離れている太子廟の方へ運んで行った。