轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
法華経の声は、近づいてくる。
石垣をあがると、廟の廻廊に、金剛獅子の常明燈が、あたりを淡く照らしていて、その大屋根を圧している敏達帝の御陵のある冬山のあたりを、千鳥の影がかすめて行った。
廻廊の下をめぐって、法師は、御墳のある廟窟の方へまわった。もうそこへゆくと、身のしまるような寒烈な気と、神秘な闇がただよっていて、寺僧でも、それは何となく不気味だと常にいっている所である。
風雨に古びたまま、幾百年も手入れもしていない建物に、月の白い光が、扉の朽ちた四方の破れから刃のように中へさしこんでいた。
法師が、そっと覗いてみると、なるほど、瑯みたいに白く凍えきった若者が、孤寂として、中の床にひとりで端座しているのである。そして、彼の跫音も耳へは入らないらしく朗々と、法華経を誦しつづけていた。
「あ……。やはり範宴少納言であった……」法師はつぶやいて、そっと、跫音をしのばせながら、そのまま、寺の方へ帰って行った。
二
ここに参籠してから六日目の朝が白々と明けた。
二日め、三日めは、飢えと寒気に、肉体の苦痛がはなはだしかったが、きのうあたりからは、身心ともに痺れて生ける屍のような肉体の殻に、ただ、彼の意念の火が――生命の火だけが――赫々と求法の扉に向って燃えているのであった。