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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

ねがわくは、小止観の結論まで、講じていただきたいが」という者もあるし、また、

「きょうのお説は、われらが今まで聴聞いたしてきた先覚の解釈とは、はなはだ異なっている。われわれ後輩のものは、従来の説を信じていいか、御房の学説に拠っていいか、迷わざるを得ません」と訴える人々もあるし、

「学問には、長老や先覚にも、遠慮はいらぬはずだ。どうか、もっと話してもらいたい。堂衆たち! 明りを点けろ」

立ちさわぐものもあったが、範宴は、もう席を去って、いかにもつかれたような面もちを、夕方の山影に向けながら、縁に立って、呼吸をしていた。

すると、そこへもまた、若い学徒がすぐ行って、彼を取り巻きながら、

「きょうのご講義のうちに、ちと腑に落ちない所があるのですが」とか、

「あすこのおことばは、いかなる意味か、とくともう一度、ご説明をねがいたい」とかいって、容易に、彼を離さなかった。

席をあらためて、範宴は、その人々の質疑へ、いちいち流れるような回答を与えていたが、そのうちに、互いの顔が見えないほど、講堂のうちはとっぷりと暮れてしまった。

三

性善坊が迎えにきていた。

「お師さま、あまり遅くならぬうち――」