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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

これでは、いくらお迎えに参っても、分るはずはございませぬ」

「いや、西洞院から東の大路は、なにやら、六波羅に異変があって、往来を止めてあるとのことで……」と、送ってきた従者が答えると、性善坊は、不審な顔をして、

「はて、あの大路は、つい先ほども幾たびとなく、師の房を探すために往還りしたが、なにも、さような気配はなかった」

「でも、明らかに、役人が辻に立っていて、そう申すので、やむなく、並木からこの畷へ出てきたが、馴れぬ道とて、いっこう分らず、困じ果てていたところ、お弟子衆が見えられて、ほっといたした」

「ご苦労でござった」と、覚明も共に、礼を述べて、

「これから先は、吾々両名でお供して帰院いたすほどに、どうぞ、お引取りねがいたい」

「では、牛車はそのまま召されて」

「明日、ご返上申します」

「いや、雑色をつかわして、戴きに参らせる、それでは、お気をつけて」送ってきた鎌倉者の侍たちは、牛飼も連れて、そこから戻ってしまった。

おぼろな野の中に牛車をとめて師弟は、宵の火事のうわさだの、法筵の様子だのを話しあって、しばらく春の夜の静寂に放心を楽しんでいたが、やがて、覚明は牛の手綱を握って、