轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

」この夜半すぎに聖光院を捨ててそもいずこへ走ろうとするのか、範宴の身にはすでに聖光院門跡の纒う綾の法衣や金襴は一切着いていなかった、一笠一杖の寒々とした雲水のすがたであった。

そうして聖光院を捨てて出た彼の心は、性善坊だけには、いい残してきた。彼にはすべての秘密もうちあけて――また後々のこともたのんで。

木幡民部と覚明には、遺書を認めておいて来たのである、どんなに彼らは後で驚くだろう、悲しむだろう、しかしそういう目前の感情は、範宴の今の大きな覚悟のまえにはあまりに小さい問題だ、もっともっと大きなものすら踏み越えてゆく決心なのだ、女々しくてはこれからの万難の一つも越えられまいと、自身を叱って自身の心をかたく鎧う。

「そうだ、夜の明けない間に――」歩み出そうとすると、彼の法衣のすそを引くものがあった、大きな黒い犬である。

「しっ」範宴は追い払って駈けた。

犬は、寝しずまっている世間へ告げるように吠えたてる。彼は、犬の声にすら趁われるような気持がした。

まだ暗い加茂の瀬にそって、彼は足のつづくかぎり急いだ。幸いにも、京の町では誰にも咎められなかった。そしてやがて、息を喘いて上ってゆくのは叡山の麓だった。