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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

しかし私は、はやこの老齢、それに、病もあれば、かかる有難いご法話を聴き得る余生も、そう長くはないと存じおります。……ついては、今生に思い残りのないよう、今日は、心の隅まで、お打明けもいたし、お尋ねもいたしてみたいと存ずるが、おさしつかえありますまいか」法然は、ふかくうなずいて、

「何にても、お尋ねなされ。この源空が知りたらんほどは、心を傾けてお物語り申しましょう」と、打ち解けた態でやさしくいう。

月輪殿は、ほろりと眼をうるませた。よほど、思いあまったものが胸に沈んでいることがわかる。上人は、見て取って、

「わしが呼ぶまで、誰も来るな。そこの廊架のつま戸も閉てておかれい」そういって、附随の弟子たちを遠ざけた上――

「さて、この法然に、さまでのご談合とは、いかなる儀にて候ぞ。ご懸念なく、おきかせくだされい」と、膝をすすめた。

十一

「――余の儀ではございませぬが、上人はもとより、持律戒行の清浄身におわすし、また、八十有余の御弟子たちも、みな、おごそかに戒を守っている浄行の御出家のみと存じますが。……さるを、かく申す私などは」

月輪殿は、ふと言葉を切って――自分の長い政治的な生涯を心のうちで振り返るように――