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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
そんなところではない。野卑な凡下の投げることばのうちには、もっと露骨な、もっと深刻な、顔の紅くなるような淫らな諷刺をすら、平気で投げる者がある。
そしてもう、十禅師の辻へ出ようとするころには、輦は人間で埋められて、一尺も進み得なくなっていた。
――が、綽空は、端厳なすがたを少しも崩してはいない。眉の毛一すじうごかさないという態度である。
余りにも、傷々しく思われるのは、玉日であった。被衣してさえ若い新妻は昼間の陽の下を歩み得ないほどなのが、そのころの深窓に育った佳人の慣わしであるものを。
しかし――こういう試練にかかることは、この人が良人ときまる前からの覚悟であった、父からもいわれ、綽空からもとくといわれた上で、はっきりと誓いしていたことだった。玉の肌を白日の下に曝すほどな辛さも、彼女は、辛いとは思わなかった。むしろ、嫁いでまもないうちに、良人と共に、良人の信行の道へ、こうして、忍苦をひとつにすることができた身を、倖せとも、妻の大きな欣びとも、思うのであった。
五
群集に加担もせず、また、その渦中に揉み罵られている輦の人にも共鳴せず、ただ傍観者としてこの成行きをながめている者は、