轻松读懂日语经典作品
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しんらん
親鸞
吉川 英治
「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页
ひぐらしの啼く音が、雨のようであった。松虫と鈴虫の二人は、起つのをわすれていた。
「…………」ふたりとも、先刻から、じっと、うつ向いたまま、にわかに抱き切れないような大きなものを、その胸にかかえて、さんぜんと、涙ばかりが先に流れてしまう。
(人にこの顔を見られては――)そう思うので、顔も上げ得なかったし、また、いつまでも、ここを去りたくない気がした。
大きな衝動をうけたのである。法然の一語一語が、肺腑をつきさすようだった。――さながら、きょうの仏陀と阿難とそして王子との話は、自分たちの住んでいる城――いやあの御所のうちに似ている。
快楽、虚栄、又アラユル欲望ニ惑溺シテサメザルモノハ、必ズ、命七日ニ終ラン――
ほんとうに仏陀はそう仰っしゃったのかしら? ――いやあの上人のことばではない、それは経にあることだ、仏陀の声そのものなのだ。
(仏陀の声を――)松虫は、何か、飛び上がりたいような歓喜をおぼえた。何千年のむかしの聖者の声を、今まざまざとこの耳で聞くことのできた機縁に、感謝の涙があふれてきた。
(何という自分だったろう)この鹿ヶ谷へ登ってくる前の、自分と――ここへ坐った後の自分とをくらべて見て、そう思った。