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しんらん

親鸞

吉川 英治

「名古屋新聞」1934(昭和9)年9月28日~1935(昭和10)年8月9日、1936(昭和11)年1月19日~8月<br>「台湾日日新報 夕刊」1934(昭和9)年9月30日~1935(昭和10)年8月12日、1936(昭和11)年1月7日~8月4日<br>「京城日報」1934(昭和9)年9月~1935(昭和10)年8月、1936(昭和11)年1月10日~8月<br>「神戸新聞」1936(昭和11)年1月5日~8月6日<br>「福日新聞」「北海タイムス」1935(昭和10)年9月~1936(昭和11)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 页

青空文庫

四

その動機と。また、半年あまりの苦しい迷いだの悩みだのを。

そして、自分たちの、虚偽な生活を、住蓮と安楽房の前に、残りなく懺悔して、

「どうぞ、この草庵に置いて、私たちを御弟子にしてくださいませ」いい終ると、ふたりとも、そこへ艶やかな黒髪を投げ伏して、さめざめと泣くばかりだった。

「…………」住蓮も安楽房も、それを聞いて茫然としていた。

御所の女性――しかも上皇の寵妃である局が、人目をしのんで、この山庵へ来たということだけでも、重大な問題だ、事件である。

(こんなことなら、上へあげるでなかったに――)という悔いの色は、住蓮にも安楽房の顔にも、同じようにうごいていたが、彼女たちの命がけな熱意を聞いてみると、

(さもあろう)と、同情の念がうごき、やがては、ふたりの泣き入るすがたに、

(これほどまでに、自己の生活の非を悔いて、真実の生命に甦えろうとしている者を、どうして、すげなく振り捨てられよう)と、共々、涙がにじんでしまうのであった。

しかし――おそろしいことだ、とも思うのであった。眼前の事実に戦慄をせずにいられなかった。

もし、ふたりの乞いを容れて、このまま草庵に匿しておいたらどうなるか? ――である。